
先週のブログで、熊本へ行き、既存住宅20棟の「微動探査」を行ってきた話を書きました。
長い文章になりそうだ・・・と、思い、一週間が経過してしまいましたw
今回は微動探査について書こうと思います。
実際に大きな地震を経験した地域で住宅を測定し、オーナー様から、
「この家は実際、どれくらい被害を受けているんだろう」
「見た目は大丈夫だけど、このまま住み続けても大丈夫なのだろうか」
そんな話を聞きました。
その時に強く感じたのが、「地震が起きた後、建物の状態を測ることができたら」と、いうことでした。
前回は熊本での体験を中心に書きましたが、今回は、「そもそも微動探査とは何なのか?」「何を測ると、地盤や建物のことが分かるのか?」
そして、「この技術を工藤工務店の家づくりにどう生かしていくのか?」について、少し詳しく書きたいと思います。
そもそも「微動」って何?
地震が起きていない時でも、実は地面や建物は常にほんの少し揺れています。
車や電車が走る振動。
工場などから発生する振動。
風や海の波などによって生まれる振動。
もちろん、私たちが普段の生活で「今、家が揺れている」と感じるような大きさではありません。
人間にはほとんど感じることのできない、とても小さな揺れです。
この小さな揺れを「常時微動」といいます。
微動探査では、高感度の測定機器を地面や建物に設置して、このわずかな揺れを測定します。
地震を起こすわけでもありません。
建物を大きく揺らすわけでもありません。
普段からそこに存在している小さな揺れを測るだけです。
では、そんな小さな揺れから、いったい何が分かるのでしょうか。
地盤にも建物にも「揺れやすいリズム」があります。
ブランコをイメージすると分かりやすいと思います。
ブランコは、タイミングよく押してあげると、どんどん大きく揺れますよね。
地盤や建物にも、それぞれ「揺れやすいリズム」があります。
これを「周期」といいます。
地盤には地盤の揺れやすい周期があり、建物には建物の揺れやすい周期があります。
そして地震を考えるうえで重要になるのが、この地盤と建物の関係です。
地盤の揺れと建物の揺れのタイミングが近くなると、「共振」という現象によって建物の揺れが大きくなることがあります。
つまり、耐震を考える時には、「建物がどれだけ強いか」だけではなく、「その土地がどんな揺れ方をするのか」そして、「そこに建つ家がどんな揺れ方をするのか」まで考えることが大切なんです。
実は、この微動を利用した研究には長い歴史があります。
日本では1930年代頃から、地震や地面の振動を観測する中で、「場所によって地面の揺れ方が違う」と、いうことが研究されてきました。
その後1950年代になると、地震が発生していない普段の小さな揺れ、「常時微動」を測ることで、地盤の振動特性を調べる研究が本格的に進みます。
最初から現在のように「地下を探査する」という目的だったわけではありません。まずは、「この地盤は、どんな周期で揺れやすいのか」を知るところから始まりました。
その研究が進み、複数の測定器を使って微動を詳しく解析することで、地下の構造まで推定する「微動探査」へと発展してきました。
今では地盤だけではなく、建物の微動を測ることで、建物そのものの揺れ方を調べることもできます。
2000年代から、高層マンションなどから始まり、スカイツリーでも測定は行われたそうです。
大規模建築用の大きな機械はあったのですが、これを住宅用にコンパクトな大きさになったのは、
10年くらい前になります。
工藤工務店では耐震性能を非常に大切にしています。
許容応力度計算による構造計算を行い、耐震等級3の家を設計する。
そして、その設計通りに現場できちんと施工する。
これは当然のことですし、これからも変わりません。
でも、少し考えてみてください。
構造計算で確認しているのは「設計上の耐震性能」です。
私たちがお客様にお引き渡しするのは、構造計算書ではありません。
実際に完成した家です。
だったら、完成した家も測ってみたい。
微動計を建物に設置して、実際に完成した住宅がどのような揺れ方をしているのかを測定する。
建物の固有周期や揺れ方を実測し、その家の最初の状態をデータとして残す。
私は、ここに大きな意味があると思っています。
断熱は計算する。気密は測る。では、耐震は?
例えば、住宅の断熱性能。
設計段階ではUA値を計算します。
そして気密性能については、完成した建物で気密測定を行い、C値を実測します。
工藤工務店では当たり前にやっていることです。
図面上で性能を確認するだけではなく、「実際に建った家を測る」と、いうことです。
構造計算をして、耐震等級3を確認して、正しく施工して、そこで終わり。
もちろん、それでも現在の住宅としては十分に高い耐震性能です。
でも私は、もう一歩先に進めないかと考えています。
「計算する耐震」から、「計算して、建てて、測る耐震」へ。
耐震等級3という設計上の強さを確保したうえで、完成した建物の揺れ方を微動探査によって実測する。
設計と施工の結果として完成した家を、最後に「測る」。
これから工藤工務店が取り組んでいきたいことの一つです。
新築では、建てる前と建てた後に測る。
これから工藤工務店で新築する住宅では、こんな流れを考えています。
まず、家を建てる前。
通常の地盤調査を行います。
それとは別に微動探査を行い、
「この土地がどんな揺れ方をしやすいのか」を測定する。
そして、その土地の特性を知ったうえで、耐震等級3の建物を設計し、施工する。
今度は建物が完成時に微動探査で測定してお引渡しとなります。
そして、そのデータを残しておく。
これが重要だと思っています。
なぜ完成時のデータを残すのか
ここが今回、一番伝えたいところかもしれません。
家は完成したら終わりではありません。
お客様にとっては、そこから何十年という暮らしが始まります。
そして、その長い時間の中で、大きな地震を経験する可能性があります。
もし新築時に建物の微動を測定しておけば、その家の「最初の状態」をデータとして残すことができます。
そして将来、大きな地震が発生したら、もう一度同じように測定する。
新築時のデータと地震後のデータを比較する。
そうすることで、建物の揺れ方などに変化が生じていないかを確認するための材料になります。
「見た目は大丈夫。でも、本当に大丈夫?」
熊本で住宅を測定していて、このことを強く感じました。
大きな地震が来たからといって、すべての住宅が倒壊するわけではありません。
むしろ多くの住宅は、そのまま建っています。
建物の耐震性は、完成時が100%で、時間が経つにつれて上がる事はありません。
少しずつ落ちていくのが耐震性です。
外から見れば大丈夫そう。
室内を見ても、大きな被害はなさそう。
でも、住んでいる人からすれば、「本当にこのまま住み続けて大丈夫なの?」と、いう不安があります。
壁を全部剥がして確認するわけにもいきません。
そこで、地震前のデータが残っていたらどうでしょう。
地震後にもう一度測定して、以前の状態と比較することができます。
もちろん、微動探査だけですべての損傷を判断できるわけではありません。
必要に応じて目視調査や詳細な耐震診断なども行う必要があります。
それでも、「地震前の家の状態をデータとして持っている」ことには、とても大きな意味があると思っています。
既存住宅にもできることがある
そして微動探査は、新築住宅だけのものではありません。
今、千葉に建っている既存住宅にも使う事はできます。
私が家づくりに関わってきて思っていることが、「建物の倒壊で命をなくさないようにすること」
だと思っています。
小学校の頃、先生に「地震があった時は建物の中が安全だから、外に出ないように」と、教えられてきたのに、10年前の熊本の地震で建物の倒壊で命を亡くした方がいらっしゃいました。
あの時のニュースで知った時のショックは、今でも忘れる事ができません。
もし、千葉で倒壊レベルの大きな地震があったときに、倒壊するお家を1件でも減らすことが、
地域の工務店の使命だと思っています。
熊本で実際に大きな地震を経験した住宅を測り、そこで暮らす方々の話を聞いたからこそ、そう思います。
家を建てて終わりではなく、その家で安心して暮らし続けてもらうために、私たち工務店に何ができるのか。
微動探査という新しい技術も活用しながら、「千葉の家を守る。」これから工藤工務店が取り組んでいきたいことです。
で、実際の微動探査の機械ですが、特殊な機械なので納期がかかり、納品は年明けになる予定です。
ただ、地震は機械の納品を待ってくれるわけではありません。
そんなにゆっくりしている場合でもないので、現在、機械をレンタルして一足先に微動探査を始められるよう準備を進めています。
まずは工藤工務店のオーナー様の家から。
キャンペーンなどもやりたいと考えております。
オーナー様のご自宅はもちろん、ご両親の実家などの既存住宅も測定致します。
準備が整いましたら、改めてご案内しますので、もうしばらくお待ちください。
久しぶりに長いブログのネタになりましたw
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
構造王の佐藤氏から微動探査の話が動画にありますので、詳しく知りたい方は見てもらえたらと思います。









